富山県のほぼ中央に位置する呉羽丘陵の北側、神通川の西側に位置する富山市八ケ山地区では、5月半ばを過ぎた頃から、ハウスの中でトマトが赤い実を結びはじめます。栽培されているのは、半促成栽培品種で生食用の桃太郎ファイト。果肉が硬くしっかりとした歯ごたえがあり、強い甘みのなかにほどよい酸味があるのが特長です。
「富山トマト」が市場に出回るのは、5月末からの約2カ間。まだ雪深い1月中旬に種が播かれ、2月に苗木は病気に強い台木に接ぎ木され、春先に定植されます。そして5月末、本格的な夏の到来を前にハウスを旅立ち、夏の暑さを予見するかのような鮮やかな赤い実と爽やかな酸味で、食卓にひと足早い夏を届けます。
富山市八ケ山地区でトマト栽培がはじめられたのは、今から50年前にさかのぼります。富山駅まで車で10分ほどの距離にあり、都市郊外型の近代的な農業がさかんなこの地区は、現在も生産出荷組合が独自に運営する産地市場が開かれるなど、中心市街地の台所として多くの農産物が供給されています。「産地市場を開いているので、業者や消費者のニーズをいち早く取り入れられる」と話すのは、八ケ山園芸生産出荷組合の福島保之専務理事。トマトの市場性にいち早く目をつけた同組合は、県内で先がけて昭和40年に選果機を導入し、集出荷体制を整備。現在は約2.4haの農地で、9軒の農家がトマトの栽培を行っています。
八ケ山地区に続いて、富山市南部にある友杉、安養寺、石田、関、森田、西野新地区でトマト栽培がはじめられました。平成6年、富山産トマトの品質向上とブランド力強化を目指して、八ケ山地区と富山市南部の生産地が協調し、統一ブランドとして「富山トマト」が誕生。南北の両地域で収穫されたトマトは、地区や農協をまたいで一元集荷され、「富山トマト」という統一ブランドで出荷されています。
平成20年現在、両地区をあわせた富山トマトの栽培農家は全16軒、栽培面積は約4ha。毎年約300トン前後が安定して市場へ供給されています。これは県全体の生産量の約9割を占めます。
富山トマトに関して注目されるのは、全生産者がエコファーマーとして知事の認定を受けていることです。エコファーマーとは、堆肥による土づくりや、化学農薬・化学肥料を減らした環境にやさしい農業に取り組む生産者に与えられるものです。「時代に先がけてトマト栽培をはじめたように、消費者が求めるものをつくり続けたら、エコファーマーの認定ということになった」と、福島さんは説明します。
地産地消を合い言葉に、地元産農産物の生産流通の必要性がますます高まるなか、時代に先がけた「富山トマト」の取り組みに、今後ますますの期待が寄せられます。
(写真はエコファーマー澤瀉勉さん)
栽培方法の改善や品種の改良によって、近年は1年中トマトを食べることができます。国内で最もトマト栽培がさかんな熊本県をはじめ、九州地方で栽培されるトマトは冬から春にかけて収穫され、全国へ流通します。トマト前線は徐々に北上し、富山トマトが収穫を終えた8月以降は岐阜県産や北海道産が流通し、再び九州地方へと収穫の舞台が移されます。こうしたことからトマトは1年を通じて店頭に並べられます。
これらのトマトと比較して、富山トマトは何よりも新鮮であることが特長です。朝に収穫されたものがすぐに選果場へ運ばれ、早ければその日の夜の食卓に並べられます。獲れたてのトマトは、太陽の恵みと大地の香り、そして故郷の大地が育んだ栄養を、抜群の鮮度で我々に届けてくれます。
いろいろな野菜が四季を問わずに出回る時代だからこそ、産地や旬にこだわってみてはいかがでしょうか。
[今が旬 バックナンバー]
■2009年5月:シロエビ
■2009年4月:チューリップ
■2009年3月:ホタルイカ
■2009年2月:酒
■2009年1月:ブリ
■2008年12月:かぶら寿し
■2008年11月:りんご
■2008年10月:てんたかく