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特集:今が旬 ますの寿し

独特のスタイルで人気

 竹の棒に曲げわっぱ。容器を締めつけるゴムをほどいて、丸い蓋を開けると、中から芳ばしい笹の葉が重なり合って顔を出します。その笹を開いて現れるのは、鱒は鱒でもサクラマス。鮮やかな紅色の切り身が笹の緑に映えて、見事なコントラストをつくります。富山名産として手土産に人気のますの寿しですが、はじめて手にした時は、どうやって食べたらいいかわからない、という人が多いのではないでしょうか。その独特の味わいとスタイルが人気を呼んで、現在は富山を代表する土産物になっています。
 富山県内には、30数軒の鱒寿司店があり、さらにはホテルや寿司屋、惣菜店など、様々な業者がますの寿しを作っています。マスの厚みやシメ加減、酢飯の味、ご飯の炊き方、笹の葉の使い方、鱒や酢飯の盛りつけ方など、作り手によって様々な特長が見られるのも、ますの寿しの楽しみではないでしょうか。

越中名所「舟橋」の名物土産

 富山城址を流れる松川沿いには、古い歴史をもつ老舗の鱒寿司店が集まっています。春になると、沿道約3.5㎞に渡って植えられた桜並木が満開を迎えるこの川は、かつて大きく蛇行していた神通川を、現在のような直線に改修した際に残った河川跡に整備されました。改修前の神通川は、春になるとサクラマスが遡上し、それを捕えて押し寿司にしたのがますの寿しのはじまりと言われます。そのルーツは、江戸享保年間、割烹の術に秀でた富山藩士が、三代藩主前田利興【としおき】に献じた「鮎の鮓」にあるとされます。これを時の将軍、徳川吉宗に献上したところたいへん気に入られ、それをきっかけに富山名物と謳われるようになりました。
 江戸時代の神通川には、川に浮かべた50艘以上の舟を太綱でつなぎ、その上に木の板を並べた「舟橋」が架けられていました。その規模が日本一であることから、神通川の舟橋は観光名所でした。橋のたもとには旅人が憩う茶屋があり、神通川でサクラマスが捕れる時期に、鮎の鮓を改良したますの寿しが販売されるようになると、たちまち旅人の間で評判になりました。今日の松川沿いで営業する鱒寿司店の中には、当時から営業を続ける老舗の暖簾があります。

駅弁として全国に知れ渡る

 川に浮いた舟橋は、足を滑らせて川に落ちる人が多かったため、明治15年、舟橋に代わって木橋が架けられました。さらに明治30年代、神通川の軌道を直線的に縦断させる改修工事以降は、遡上するサクラマスは激減しました。ところが、ますの寿しの人気は衰えることなく、その後も富山名産として残りました。
 その存在が再び全国に知れ渡ったのは、国鉄の駅構内で「駅弁」として販売されるようになった大正時代のことです。格調高いわっぱの中で、良質の富山米と淡泊な鱒の風味が調和し、彩りも鮮やかなますの寿しは、富山独特の名産品として、鉄道の普及とともに全国へ広まりました。その後、百貨店やスーパーマーケット等で行われる「駅弁大会」や「物産展」で紹介されるにつれて人気が高まり、富山を代表する特産品として知れ渡るようになりました。現在もますの寿しは、歴史の中で育まれ、富山の大地で育った良質な米を使った特産品として、揺るぎない人気を誇ります。

鱒寿司の手づくり体験が人気

 地元の食材を使った特産品として誕生し、土産品として世に広まったますの寿しは、今も富山の観光産業に大きく貢献しています。最近人気があるのは「ますの寿しの手作り体験」。これは、三枚におろした鱒と酢飯を、笹の葉や曲げわっぱに詰め、重しをして製品に仕上げるまでの工程を体験するものです。以前は保存食という意味合いから、鱒を多めの酢できつくしめ、一日中重しをしましたが、最近は刺身に近い鱒を使い、20〜30分間だけ重しをして軽目に仕上げるのが一般的です。体験で手づくりしたお手製のますの寿しをほお張れば、その魅力にもっと近づけることでしょう。

(参考文献、HP)
富山なぞ食探検(読売新聞富山支局編/桂書房)
富山市観光ガイドHP
千歳HP

[今が旬 バックナンバー]
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 ■2010年2月:魚津寒ハギ
 ■2010年1月:啓翁桜
 ■2009年12月:富山干柿
 ■2009年11月:さといも
 ■2009年10月:富山しろねぎ
 ■2009年9月:ベニズワイガニ
 ■2009年8月:呉羽梨
 ■2009年7月:入善ジャンボ西瓜
 ■2009年6月:トマト
 ■2009年5月:シロエビ
 ■2009年4月:チューリップ
 ■2009年3月:ホタルイカ
 ■2009年2月:酒
 ■2009年1月:ブリ
 ■2008年12月:かぶら寿し
 ■2008年11月:りんご
 ■2008年10月:てんたかく