かぶら寿しは、主に県西部で受け継がれる郷土料理です。年の暮れに漬け込んで、正月の食卓に並べられる「おせち」の一品として親しまれています。
かぶら寿しは、「米麹」でつくる「なれずし」の一種です。まず、冬に収穫されたカブを切って塩漬けにします。そして塩漬けにしたブリやサバをカブの切り目に挟み込み、米麹で漬け込んで発酵させます。細かく切った人参や昆布などを一緒に漬け込むと、正月料理にふさわしい彩りに仕上がります。
かぶら寿しは、江戸時代の加賀藩政時代に誕生したといわれます。その起源には諸説があり、石川県の宮の腰港(金石町)で、豊漁を祝って行われる儀式の際にご馳走として出されたという説や、農民が正月のご馳走としてブリを食べる際に、人目を気にしてカブで隠したのがはじまりという説などがあります。いずれにしても正月に食べることが目的とされており、塩漬けや発酵などの工程に時間を要することから、その仕込み作業は師走に行われ、この季節の風物詩となっています。
そもそも「なれずし」は、魚を保存する方法として生まれたのがルーツといわれます。冬の富山湾は、ブリ漁がさかんです。冷蔵庫がなかった時代に、ブリは塩漬けにして保存されました。そのブリをさらに塩漬けしたかぶらに挟み込んで発酵させることで、ブリの味わいをさらに長く楽しんだところに、先人たちの知恵が感じられます。
かつて北陸地方の冬は、深い雪に閉ざされました。「かぶら寿し」は、本格的な冬の到来を前に漬け込まれ、正月の訪れとともに取り出され、雪に閉ざされた冬を乗り切るための保存食として受け継がれて来たのです。現在では10月から2月頃の間市販されており、ブリ以外にサバを用いたものも多く見られます。
かぶら寿しの美味しさの決め手は「米麹」にあります。さらには、米を発酵させる「麹」にあるといってもよいでしょう。麹が良いと米が芯まで発酵するため、食べた時の舌触りがまろやかになるだけでなく、魚を充分に発酵させて芳醇な味わいを醸し出します。食べたときに米の芯が舌に残ったり、魚臭く感じられる場合は、麹による米の発酵が不十分だったと考えられます。
富山には、今も多くの「麹屋」が営業するほか、麹のもととなる「種麹」をつくる業者があります。これらの業者が供給する良質な麹を使って、「かぶら寿し」は富山を代表する郷土料理として、今日に受け継がれています。
[今が旬 バックナンバー]
■2008年11月:りんご
■2008年10月:てんたかく